無線にゃん:「LTEに関する質問に答えてみる」を読んで、質問1について思ったことを綴る。引用ブログサイトには、LTEは消費電力が大きい(バッテリの持ちが悪い)理由として、LTEが新しい技術(OFDMAのセルラ)である点、ネットワークパラメータが最適化されていない点など、LTE技術が発展途上である理由を挙げている。既存のLTEの消費電力が大きい理由としては、私もほぼ同様の意見を持っているが、違うところを述べる。
携帯電話端末の消費電力が大きい処理系統は、上り方向のデータ伝送(端末から基地局へ電波を発信する部分)である。ただし、最近のスマートホンのCPU(実際にデジタル処理をするIC部分、プロセッサ)はデュアルコア(演算処理部分を2つ並列して実装)であるため、従来のCPUと比較して格段に消費電力が上がっている。LTE方式(3.9G、第3.9世代、Xi)はWCDMA方式(3G、第3世代方式、FOMA)とは異なり、高速データ伝送を実現するためにOFDM方式、多重化(複数の人を収容する手法)を含めてOFDMA方式を使用している。
OFDM方式の特徴として無線伝送は速い反面、消費電力が大きくなる問題点がある。そこで、携帯電話端末の消費電力を抑える(バッテリの持ちをよくする)ために、下り方向のデータ伝送(基地局から端末への通信)はOFDM方式だが、上り方向のデータ伝送(端末から基地局への通信)は、SC-FDMA方式を使用している(純粋なOFDM方式と比較して、SC-FDMA方式は消費電力が小さい)。従って、端末側の消費電力が大きい理由として、OFDM方式を使用していることは直接的には関係ない。また、実際のところ、CDMA方式もOFDMA方式も、消費電力の点ではあまり変わらないはずだ。ただし、通信LSI(無線通信処理を行うチップ)は、長年のノウハウが蓄積されているため、WCDMA方式の方が小さいのは事実だと思う。
LTE方式の消費電力が大きい理由として、私は以下の点を指摘する。現在のセル構成(携帯電話のサービスエリアの構成)は、WCDMA方式(3G、FOMA)とLTE方式(3.9G、Xi)が混在しており、LTE方式のサービスエリアが小さい。そのため、スマートホンで通信を行う際、WCDMA方式とLTE方式の間で通信方式の切替が多発していると予想する。その通信制御処理にかかるデータ伝送量が大きいことが、結果的に端末の消費電力を増大させる原因に思える。これは、将来的にLTE方式の通信エリアが広がり、WCDMA方式とLTE方式との間での通信方式の切替処理の頻度が小さくなれば改善する。